2001年12月28日（金） 09:18
AP通信員アレクサンダー・ラッツ
ブリュッセル（AP）
スペインは来年初めより欧州連合議長国を務める。これは1986年のEU加盟以来３度目である。６月末までスペイン政府は欧州連合の基本路線を規定することになる。スペイン政府は「一層の欧州」Mehr Europa とのスローガンの下に６つの重点課題を設定する意向である。最重要課題は、９月11日のアメリカのテロ事件を受けたテロ撲滅である。スペインは進んでこのテーマを取り上げるものの、自ら数十年来バスクの地下組織ETAのテロに悩まされている。
プログラムを発表する際、ホセ・ピケ外相は「欧州は新たな脅威に一致協力して断固たる姿勢で臨まねばならない」と強調し、このためにはEUの法的手段を強化する必要があると述べた。9月11日の事件はすでにベルギーの議長職にも大きな影を落としている。ピケ外相はこの関連で安全と司法の分野で「一層の欧州」統合を図る考えである。
1999年10月のフィンランドのタンペレにおけるEU首脳会議で、各国首脳は「自由、安全および公正の連合」を創設することで合意に達した。しかしこれまでこの目標に向けた進展はほとんどなかった。とりわけ難民・移民政策では合意点が見えない。
スペインはまた、長期的視点でEUの競争力を高めるために「一層の欧州」統合を図る意向である。2000年3月のリスボンEU首脳会議においては、欧州を2010年までに「最も競争力の強く、最もダイナミックな、知識に基づく経済圏にする」というモットーが謳い上げられた。来年３月のバルセロナにおける次の首脳会議では加盟国の首脳が現状総括を行う予定である。ピケ外相は特にエネルギー市場の自由化における進展を期待しているが、これにはとりわけフランスの抵抗がある。
進展が得られる見込みは薄い。なぜならドイツ同様フランスでも2002年には選挙が控えている。加えてオランダでも選挙があり、ポルトガルでも行われる見通しである。となれば、政治家は雇用の削減を招きかねないテーマは敬遠して手をつけないであろう。
選挙を間近に控えた状況はEU拡大のさらなる進展にも影を落とすであろう。確かにピケ外相は新規加盟国受け入れの「歴史的意義」を強調し、スペイン政府はタイムスケジュールを守るためにあらゆる努力を惜しまないと約束した。しかし、最も先行している候補国−現在は10ヶ国とされている−との加盟協議が計画通りに2002年に終了するかはかなり疑わしい。
キプロス、マルタ、ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロヴェニア、スロヴァキア、エストニア、ラトヴィアおよびリトアニアは確かにこれまで加盟に向けて順調に進んでいるが、農業や地域助成というような厄介な問題はまだ手が付けられていない。農業はほかならぬフランスにとって死活問題である。なんといってもフランスは気前良いEU農業補助金の最大の受益者なのである。
それゆえフランス政府がこの補助金システムの変更を易々と了承するとは考えられない。しかし仮に現在の構造が拡大後のEUにそのまま適用されたならば、もはや財政的には維持できなくなる。いずれにせよ、EUの中で最大の実質支払い国であるドイツがこれを決して承諾しないであろう。
同じシナリオが地域助成金についても浮かび上がる。ここではスペインが群を抜く最大の受益国であり、同国がこの収入源を断念する用意があるとは考えられない。議長国スペインは６月のセヴィリアでの首脳会議において拡大協議の総括を行う予定である。それまでには拡大協議が議長国デンマークのもとで2002年末までに完了するか否か、見通しが立つであろう。
加えてスペインは欧州の将来像に関しても功績を上げようと考えている。３月にいわゆる改革会議 Konvent が発足し、欧州連合の新たな改革の基本案を策定することになっている。その目標は最大で12ヶ国が新規加盟を果たした後もEUの行動能力を確保することである。
最後の課題としてスペイン政府は欧州連合のより統一的な外交政策を目指すとしている。「世界の中で一層の欧州」の存在が必要であるとピケ外相は強調した。議長国ベルギーはこの領域において高い授業料を払う羽目になった。とりわけ中東紛争の仲介を試みた際、ベルギー政府は当事者から本気で相手にされないことを気づかされた。EUの外交官はスペイン政府に「とりわけ中東問題でより専門的な役割」を果たすよう期待している。
原題：Spanien will "mehr Europa"
Terror und Erweiterung beschaeftigen neue EU-Praesidentschaft - Madrid uebernimmt das Ruder von Belgien
Von AP-Korrespondent Alexander Ratz